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はじめに

この記事は、OpenClaw 導入をテーマにした連載記事の第3回です。OpenClaw の概要や導入全体の話は導入事例の記事でまとめており、技術的な詳細は本連載の各記事で整理しています。

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この記事で記載しているサンプルコードは、公開リポジトリで参照できます。

GitHub:

OpenClaw を単なる分析ツールではなく、実務に近い提案を返す存在にしたいなら、アクセス数や売上だけを見せても不十分です。当社では、会社概要、年間計画、月次計画といった会社の文脈そのものも AI に渡す必要があると考えました。

この記事では、なぜ会社の文脈情報を整備したのか、どのように入力基盤を作ったのか、そして今後どう使っていくのかを整理します。

なぜ会社の文脈が必要だったのか

これまでの AI 活用では、人間が会社データの一部だけを切り出して見せ、助言を受ける形が中心でした。そのやり方でも局所的な相談には使えますが、会社全体の方向性や優先順位を踏まえた提案にはなりにくい面があります。

当社が目指しているのは、AI に会社のデータをできるだけ読み込ませ、改善提案を出させ、それを人間が実行し、アクセス、問い合わせ件数、売上などの数字を見ながら方向性を決めていく AI ドリブンの経営 です。

そのためには、事業の方針や計画も OpenClaw が読める形で持っている必要がありました。

何を入力できるようにしたのか

当社では、次の情報を入力できるようにしています。

  • 会社概要
  • 年間計画
  • 月次計画
  • 月末の振り返り情報

このうち、月次計画は月初に作成し、月末に振り返りできるようにしています。単に計画を書く場所ではなく、実績と合わせて評価できる形にしているのがポイントです。

なぜ月次計画と振り返りを入れたのか

OpenClaw が外部サービスから取ってくる定量的な情報だけでは、「何を目標にしていたのか」「その月にどこへ力を入れるつもりだったのか」は分かりません。数字だけを見ても、それが良いのか悪いのかを会社の方針に照らして判断するには限界があります。

そのため、月初に人間が計画を書き、月末に振り返りを入力し、OpenClaw が拾ってきた定量情報と合わせて評価できるようにしています。これにより、「数字はこうだった」「人間側はこう動いた」「その結果をどう見るか」を同じ文脈で扱えるようにしたいと考えています。

現時点でどこまで進んでいるのか

この機能は 2026年4月に入れたため、2026年4月13日(月)時点では、まだ月末振り返りは未実施です。つまり、入力基盤はできているものの、実際の運用サイクルはこれから回していく段階です。

ただし、ここを整備したことで、今後は単なるレポート出力だけではなく、OpenClaw に「当月の計画に照らして何をどう評価するか」まで考えさせる土台ができました。

どこに保存し、どう使うのか

会社概要、年間計画、月次計画、顧客情報、営業日報といった人間が入力する情報は、Cloudflare の R2D1 を使って保存し、OpenClaw が参照できるようにしています。

この記事で触れている会社文脈系のサンプルコードは、公開用リポジトリの 03-company-context-samples にまとめています。R2 の疎通確認と Markdown 保存、D1 の疎通確認と索引登録、D1 用の sample schema / seed SQL を、公開用リポジトリとして切り出しやすい形で整理しています。

ここで重要なのは、これらを単なる入力フォームの保存先にしていないことです。R2 と D1 は、人間と OpenClaw の共有データ基盤として位置づけています。人間が入力した情報を OpenClaw が参照し、OpenClaw が出力したレポートを人間が読むという循環を作るためです。

サンプルプログラムの使い方

このサンプルで最初にやることは、Cloudflare R2D1 に対して、安全に接続できることを確かめることです。文脈基盤は派手な処理よりも、「保存できる」「索引できる」「OpenClaw が後から読める」の 3 点が重要です。

手順は次のとおりです。

  1. 03-company-context-samples を参照し、ローカルに配置したうえでそのディレクトリへ移動する
  2. pnpm install を実行する
  3. .env.example.env にコピーする
  4. Cloudflare の認証情報、R2 bucket、D1 database ID を .env に設定する
  5. pnpm run check で型チェックを通す
  6. 疎通確認とサンプル投入のコマンドを順に実行する

実行コマンドは次のとおりです。

pnpm run test:r2pnpm run upload:r2pnpm run test:d1pnpm run seed:d1

役割の違いは明確です。

  • pnpm run test:r2 R2 へ接続できるかを確認する
  • pnpm run upload:r2 会社概要や計画の Markdown を保存できることを確認する
  • pnpm run test:d1 D1 へ接続できるかを確認する
  • pnpm run seed:d1 文書タイトル、期間、R2 object key などの索引情報を登録できることを確認する

このサンプルの時点で、会社情報そのものを大量に入れる必要はありません。まずは sample Markdown と sample SQL を使って、文脈文書を保存し、検索や参照のための索引を作る流れが再現できれば十分です。

技術構成の考え方

この入力基盤や閲覧基盤は、React Router を使った SSR ベースの構成を前提にしています。Cloudflare 上で動かしやすく、R2 や D1 と組み合わせやすいからです。

また、周辺の API 取得やレポート配布も含めて、全体は pnpm workspace のモノレポで管理しています。これにより、OpenClaw の仕様書、取得処理、レポート閲覧基盤、入力画面を分断せずに管理できるようにしています。

セキュリティで意識したこと

会社概要や計画情報は、売上データや顧客データとは別の意味で重要な社内情報です。そのため、この領域でも次を徹底しています。

  • 秘密情報はローカル保存を原則にする
  • GitHub に秘密情報を置かない
  • OpenClaw は専用 PC 上で動かす
  • 必要なデータにだけアクセス権を付与する
  • 不要な領域や機密性の高い領域には触れさせない

AI の精度を上げたいからといって、何でも読ませればよいわけではありません。必要な情報を整理して渡し、不要な情報には触れさせない設計が前提になります。

この領域の意味

会社概要、年間計画、月次計画を OpenClaw が読めるようにしたことで、AI は単に数字を分析するだけでなく、「当社が何を目指している会社なのか」「今月何を重視しているのか」を踏まえて提案できる方向へ進み始めています。

これは、会社の情報を人間だけが握り、必要なときに断片的に AI へ渡すやり方からの転換です。OpenClaw に会社全体の文脈を持たせることで、AI が会社の状況を継続的に把握し、提案の前提そのものを共有できるようになります。

疎通確認ができたら OpenClaw にやらせたいこと

この基盤ができると、OpenClaw には次のような役割を持たせられます。

  • 会社概要を読んで、提案の前提となる事業内容や重点領域を理解させる
  • 年間計画を読んで、その年に重視している方針や優先テーマを踏まえさせる
  • 月次計画を読んで、当月の重点施策と評価軸を把握させる
  • 月末の振り返りと実績データを照合して、計画との差分や未達要因を要約させる
  • Web マーケティングや顧客分析の結果を、会社方針や月次重点に照らして再評価させる
  • 次月の重点施策案や、優先的に見るべき数字を提案させる

疎通確認の先で本当にやりたいのは、単に会社概要を保存することではありません。OpenClaw に「数字はこうだが、今月の方針から見ると何を優先すべきか」まで考えさせることです。これによって、外部データの分析結果と会社の経営文脈を同じ基盤の上で扱えるようになります。

今後やりたいこと

ここまでで、Web マーケティング、顧客との関係性強化、会社概要や年間・月次計画といった経営文脈を、OpenClaw が継続的にインプットできる基盤は一通り揃ってきました。加えて、レポートサイトを通じて、社員が会社情報やレポート結果へアクセスしやすい状態も作れています。

次にやりたいのは、この基盤を使って施策そのものをもう一段先へ進めることです。まずは、顧客情報を分析したうえで、OpenClaw にメルマガのネタ出しや文面の下書きをさせたいと考えています。その後、人間が確認したうえで HubSpot から配信し、開封率や反応データを見ながら、既存顧客との関係性強化にどうつなげるかを判断していく想定です。

さらに、当社には内製の在庫管理システムがあり、AI がそのデータベースへ read 権限で疎通するところまでは進んでいます。まずは Web マーケティングの改善、顧客との関係性強化、メルマガ配信までをある程度形にし、その次の段階で在庫最適化や原価管理まで OpenClaw に実装させていきたいと考えています。

最終的には、会社の数字や計画を人間だけが断片的に見て判断するのではなく、OpenClaw が会社全体の情報を継続的に読み取り、分析し、提案し、人間が実行と最終判断を担う形へ寄せていきたいと考えています。当社が目指しているのは、そのような AI ドリブンの経営 への変革です。

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