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2023-11-18 技術ブログ

オムロンのUPSでHikvisionのレコーダーはリモートシャットダウンできるか検証してみた

    はじめに

    停電や電力トラブル発生時、レコーダーの保護のために無停電電源装置(UPS)からリモートシャットダウンを実行したいという問い合わせがありました。

    今回の記事ではオムロンのUPS、BN50Tを使って、Hikvisionのレコーダーをリモートシャットダウンできるか検証しました。

    リモートシャットダウンの方法

    HikvisionのHPにSNMPを使ったレコーダーのリモートシャットダウンマニュアルがありますのでそれの手順に従って設定を行います。

    • SNMPトラップアドレスにUPSのIPアドレスを入力
    • UPSのSNMP送信先にレコーダーを追加

    オムロン BN50Tのセットアップ

    UPSのBN50Tを開封したら、背面のオプションスロットにネットワークカード SC22を接続します。オプションスロットのねじを外します。

    ups-remote-shutdown-001

    SC22を取り付けます。カードスロットには溝が掘ってあるので溝に沿ってSC22を取り付けます。

    SC22を取り付けたらねじを締めます。

    ups-remote-shutdown-002

    BN50Tに電源ケーブルを接続します。電源が供給されると自動的にUPSが起動します。

    BN50TのIPアドレス変更

    BN50Tの初期IPアドレスは以下の通りです。

    • 192.168.2.150

    社内のネットワークと異なる場合はIPアドレスの変更が必要です。

    USBケーブル経由でIPアドレス変更

    SC22にはmicroUSBケーブルが同梱されています。

    SC22のSetupと印字された端子にmicroUSBケーブルを挿し、USB-A端子側をPCに接続します。

    ups-remote-shutdown-003

    PCにてTeraTermを立ち上げます。

    シリアルを選択し、USBシリアルデバイスを選択します。

    ups-remote-shutdown-004

    Enterキーを入力するとログイン画面が表示されます。

    Usernameとパスワードを入力します。

    初期値は以下の通りです。

    • Username:OMRON
    • パスワード:admin

    ups-remote-shutdown-005

    ログインに成功したらメニュー画面が表示されます。

    各メニューに対応する数字を入力し、Enterキーを押すことで次の画面に進むことができます。

    「1」を入力し、Enterキーを押す。これを三回繰り返すとIPアドレス変更画面まで進みます。


    「1.Network Card Setting」>「1.IP, Time and System Group」>「1. IPv4 Group」

    ups-remote-shutdown-006

    IPv4アドレス変更画面に到達したら「1. IP Address」を選択し、IPアドレスを変更します。新しいIPアドレスを入力したらEnterキーを押すとUPSのIPアドレスが新しいIPアドレスに変更されます。

    ups-remote-shutdown-007

    同様に「2. Gateway Address」も変更します。各変更が終了したら、「0」を選択して初期画面(Main Menu)まで戻り、「0」の「Exit」を選択してEnterキーを押して、コンソール画面から抜けます。 Tera Term を終了し、USB ケーブルを外します。

    BN50TのSNMP設定

    PCのブラウザを立ち上げ、BN50TのIPアドレスを入力します。

    IPアドレスを入力するとUPSの管理画面が表示されます。

    右上のログインをクリックし、ログインします。

    ups-remote-shutdown-008

    初期値はユーザ名:OMRON、パスワード:admin です。

    ups-remote-shutdown-009

    イベント通知>Eメール/SNMP Trap設定を選択し、SNMP Trapタブをクリックします。SNMPを選択します。

    ups-remote-shutdown-010

    Trapタイプ、Trapバージョン、フィルタタイプ、イベント選択を設定し、送信する情報を設定します。

    今回はSWC2とRFC1628の全メッセージがPCとレコーダーに届くように設定しました。

    192.168.40.115がレコーダー、192.168.40.191がPCになります。

    SWC2はオムロン独自のMIBであり、RFC1628はUPSの標準的なMIBです。

    ups-remote-shutdown-011

    動作確認のため、PCにてWiresharkを起動します。

    UPSから電源ケーブルを抜き、バッテリー動作に切り替え、UPSからSNMPが送信されているか確認します。

    ups-remote-shutdown-012

    SNMPの送信が確認できました。

    リモートシャットダウンの動作検証

    UPSの電源を抜き、UPSをバッテリーモードに切り替えます。

    15分ほどでバッテリー残量が10%以下になりました。

    PCにはLowバッテリーのSNMPメッセージが届いています。

    バッテリー残量が10%以下になるとバッテリー残量が少ないことを示すメッセージが届きます。

    ups-remote-shutdown-013

    しかし、Hikvisionのレコーダーはシャットダウンしませんでした。

    HikvisionのマニュアルではAPCのUPSを使用した例が載ってました。

    APCのUPSはバッテリー残量が少なくなると以下のメッセージを送信します。

    「The battery power is too low to support the load if power fails, the UPS will be shutdown immediately.」


    オムロンのUPSではバッテリー残量が少なくなると以下のメッセージが送信されます。

    「The UPS batteries are low and will soon be exhausted」

    メッセージの違いでリモートシャットダウンされないのかもしれません。

    SNMP以外のリモートシャットダウンは可能か検証

    SNMP以外の方法でリモートシャットダウンできるか検証しました。

    SSHを使い、PCからレコーダーに接続しました。

    シャットダウンコマンドを入力しても何も起きませんでした。


    Hikvisionのコマンド一覧にはシャットダウンコマンドが記載されていないため、SSHでのリモートシャットダウンはできませんでした。

    結論

    オムロンのUPSではHikvisionのマニュアル通りに設定を行ってもUPSからリモートシャットダウンはできませんでした。


    マニュアルで使用されていたUPSがAPC製のものだったため、こちらを使えばリモートシャットダウンができたかもしれません。

    追記(2023年12月21日)

    Hikvisionに問い合わせたところ、UPSを利用したリモートシャットダウン機能を実装するには、特注のレコーダーが必要であることがわかりました。

    特注には開発費用と最低発注台数分のコストが発生します。

    そのため、大規模なプロジェクトでなければ、このオプションを採用するのは現実的ではないようです。

    技術的な問題はぜひ当社問い合わせ窓口へ

    当社では、お客様の個別の要望に応じた監視カメラシステムを提供するために、様々な機器の動作検証を行っています。


    監視カメラシステムついてお困りの場合は、ぜひ当社の問い合わせフォームにご連絡ください。